デカップリングコンデンサ¶
デカップリングコンデンサとは¶
デカップリングコンデンサ(Decoupling Capacitor)は、ICの電源を安定させるために使用されるコンデンサである。
別名として
- バイパスコンデンサ(Bypass Capacitor)
- パスコン
とも呼ばれる。
なぜ必要なのか¶
ICは動作中に瞬間的な電流変化を発生させる。
例えばSTM32がGPIOを切り替えたり、モータドライバがスイッチングを行ったりすると、
急激な電流変化
↓
電源電圧低下
↓
誤動作
が発生する可能性がある。
例えば本来
3.3V
で動作しているICが、
3.3V
↓
2.8V
まで低下すると、
- リセット
- 通信エラー
- ADC誤差
- ノイズ増加
などの問題が起こる。
デカップリングコンデンサの役割¶
デカップリングコンデンサは小さな電池のような役割を持つ。
通常時
電源
↓
コンデンサへ充電
瞬間的に大電流が必要になった場合
コンデンサ
↓
ICへ電流供給
これによって電源電圧の変動を抑えることができる。
イメージ¶
デカップリングコンデンサが無い場合
IC
↑
電源のみ
電源配線の影響を直接受ける。
デカップリングコンデンサがある場合
┌─────┐
3.3V ─────┤ IC │
└─────┘
│
───
─── 0.1uF
│
GND
ICの近くに電荷の貯蔵庫を作れる。
基本配置¶
基本的な接続方法
VCC
│
├── IC
│
└── コンデンサ
│
GND
つまり
VCC-GND間
に接続する。
なぜICの近くに置くのか¶
コンデンサが遠いと配線がアンテナのようになってしまう。
悪い例
IC ------------- C
良い例
IC-C
そのため
可能な限り近く
が基本原則である。
一般的な容量¶
最もよく使われるのは
0.1uF
である。
代表的な組み合わせ
| 容量 | 用途 |
|---|---|
| 100nF | 高周波ノイズ除去 |
| 1uF | 補助 |
| 10uF | 電源安定化 |
| 100uF以上 | 大電流変動対策 |
なぜ複数の容量を使うのか¶
コンデンサには得意な周波数帯がある。
例
100nF
↓
高周波ノイズ
10uF
↓
低周波変動
そのため、
100nF + 10uF
のように組み合わせることが多い。
STM32の例¶
STM32のデータシートやリファレンス設計では
各VDDピンごとに
100nF
を配置するよう推奨されている。
例
VDD
│
├─ STM32
│
└─ 100nF
│
GND
モータドライバの例¶
モータドライバは電流変動が大きい。
そのため
100nF
+
10uF
のような構成がよく使われる。
例
VM
│
├─ DRV
│
├─ 100nF
│
└─ 10uF
DCDCコンバータとの関係¶
DCDCコンバータにも必須である。
入力側
Vin
↓
Cin
↓
DCDC
出力側
DCDC
↓
Cout
↓
Vout
これらが無いと正常に動作しない。
ESRとは¶
コンデンサには
ESR
という内部抵抗が存在する。
ESRが小さいほど
- 発熱が少ない
- ノイズ除去性能が高い
デカップリング用途では
積層セラミックコンデンサ(MLCC)
がよく利用される。
配置のコツ¶
ICの真横に置く¶
理想
IC C
配線を短くする¶
悪い例
IC --------- C
良い例
IC-C
GNDプレーンへ接続¶
可能ならGNDプレーンへ直接接続する。
Asterでの利用例¶
Asterではほぼ全てのICに必要となる。
例
STM32
↓
100nF
DRV8871
↓
100nF + 10uF
I2Cセンサ
↓
100nF
DCDC
↓
入力・出力コンデンサ
よくあるトラブル¶
コンデンサを付け忘れる¶
ICが不安定になる。
容量不足¶
電源変動が抑えられない。
ICから遠い¶
ノイズ除去効果が低下する。
GNDが長い¶
高周波特性が悪化する。
実際の基板設計での考え方¶
基板設計では
IC 1個につき100nF 1個
を基本ルールとして考えることが多い。
さらに
- STM32
- モータドライバ
- DCDC
など大電流を扱う回路では
100nF
+
1uF
+
10uF
を追加する場合もある。
まとめ¶
デカップリングコンデンサはICの電源を安定させるためのコンデンサである。
- 電源電圧の変動を抑える
- ノイズを低減する
- ICの誤動作を防ぐ
- ICの近くに配置する
- STM32では100nFが基本
- DCDCやモータドライバでは複数容量を併用する
回路設計やPCB設計では必須級の部品であり、「とりあえず付ける部品」ではなく、安定動作のための重要な要素である。