電流制限抵抗(ILIM抵抗)の計算¶
概要¶
一部のモータドライバや電源ICには、外付け抵抗によって電流制限値を設定できる機能がある。
この抵抗は一般的に ILIM抵抗 や Current Limit Resistor と呼ばれる。
適切な値を設定することで、
-
モータの過電流防止
-
ICの保護
-
配線や基板の保護
-
電源系統の保護
を行うことができる。
なぜ電流制限が必要なのか¶
モータには始動時やストール時に非常に大きな電流が流れることがある。
特にストール状態では、
モータ停止
↓
逆起電力が発生しない
↓
大電流が流れる
ため、
-
モータドライバの過熱
-
配線の発熱
-
電源電圧の低下
-
基板の損傷
につながる可能性がある。
そのため、システム全体で安全に扱える電流値に制限することが重要である。
制限電流の決定¶
制限電流は以下を考慮して決定する。
モータの定格電流¶
通常運転時に必要な電流。
モータのストール電流¶
モータ停止時に流れる最大電流。
モータドライバの許容電流¶
データシートに記載されている最大出力電流。
電源の供給能力¶
バッテリーや電源回路が供給可能な電流。
基板設計¶
配線幅やコネクタの許容電流。
ILIM抵抗の計算¶
モータドライバごとに計算式は異なる。
一般的にはデータシートに記載されている式を使用する。
例:
\(I_{TRIP}=\frac{64}{R_{ILIM}}\)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| ITRIP | 制限電流 [A] |
| RILIM | ILIM抵抗 [kΩ] |
抵抗値の算出¶
抵抗値を求めたい場合は式を変形する。
\(R_{ILIM}=\frac{64}{I_{TRIP}}\)
計算例¶
制限電流を
2A
に設定する場合、
\(R_{ILIM}=\frac{64}{2}\)
となる。
結果は
32kΩ
となる。
抵抗値が存在しない場合¶
計算結果と完全に一致する抵抗値が存在しないことがある。
その場合は、
-
E24系列
-
E96系列
などの標準抵抗値から近い値を選択する。
例:
計算結果
32.0kΩ
実際に使用
32.4kΩ
実際の制限電流確認¶
選定した抵抗値を公式へ代入し、実際の制限電流を確認する。
例:
\(I_{TRIP}=\frac{64}{32.4}\)
結果:
約1.98A
抵抗の選定¶
抵抗選定時は以下を確認する。
抵抗値¶
計算結果に近い値であること。
許容誤差¶
例:
±1%
±0.5%
±0.1%
パッケージ¶
例:
0402
0603
0805
定格電力¶
通常はILIM端子へ流れる電流は微小であるため、
0.1W
程度でも十分な場合が多い。
設計時の注意点¶
電流制限値を高くしすぎない¶
必要以上に大きな値を設定すると、
-
発熱増加
-
部品寿命低下
-
保護機能の意味がなくなる
可能性がある。
電流制限値を低くしすぎない¶
必要なトルクを発生できず、
-
始動できない
-
加速できない
-
異常停止する
可能性がある。
まとめ¶
ILIM抵抗はモータドライバの電流制限値を決定する重要な部品である。
設計時は、
-
適切な制限電流を決める
-
データシートの式から抵抗値を計算する
-
標準抵抗値から部品を選定する
-
実際の制限電流を確認する
という流れで選定を行う。