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2026/09/24(木)2・3・4限

★摺動部材に関して

1. 使用する素材の検討

前回の検討では、CNC加工機を用いてアルミニウム合金を加工し摺動部品として使用するという方針であった。しかし、摺動部材としての性能をより総合的に検討するため、今回はアルミニウム合金に加えて、機械部品に広く使用されている樹脂材料についても追加の検討を行うこととした。

2. POM,PA,PTFEとアルミニウム合金の比較

実際の機械設計において比較されることの多いPOM樹脂、PA樹脂、PTFE樹脂の3種類にアルミニウム合金を加えた計4種類の素材について、それぞれの特性を摺動部材としての観点から整理する。

  • POM樹脂(ポリアセタール)

摩擦係数が比較的低く、耐摩耗性、剛性、寸法安定性、加工性のバランスに優れる。特に吸水率が比較的小さいため、環境湿度による寸法変化を抑えやすい。

したがって、CNC加工による精密な歯車製作との相性が良いと言える。

  • PA樹脂(ポリアミド)

強度、靭性、耐摩耗性に優れるため、荷重や衝撃を受ける機械部品には適している。一方で、吸湿性が比較的大きく、水分の吸収によって寸法や機械的特性が変化する。

そのため、精密な歯形やバックラッシュを維持する必要がある今回の用途では、環境条件によっては不利となる。

  • PTFE樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)

非常に低い摩擦係数と優れた耐薬品性を持つため、低摩擦を最優先する摺動部には適している。しかし、POM樹脂やPA樹脂と比較して剛性が低く、クリープしやすい。

また、低摩擦であることと耐摩耗性・荷重保持能力が高いことは必ずしも同義ではない。歯車では歯面に荷重が作用するため、PTFE樹脂の低摩擦性だけを理由としてこれを採用するのは適切ではないと言える。

  • アルミニウム合金

アルミニウム合金は、POM樹脂などの樹脂材料と比較して剛性や強度に優れており、荷重による変形を抑えやすい。また、CNC加工による高精度な部品製作が可能であり、寸法安定性にも優れるため、精密な機械部品の材料として適している。

一方で、アルミニウム合金を摺動部材として使用する場合には、相手材との組み合わせや表面状態、潤滑条件などを考慮する必要がある。特に、樹脂材料と比較すると、摺動用途においては材料同士の摩擦・摩耗を考慮した設計が必要となる。

また、アルミニウム合金はPOMと比較して材料自体の剛性が高い反面、今回のような小型の摺動部品では、必要以上の強度・剛性を持たせることが必ずしも有利とは限らない。

以上の比較から、アルミニウム合金は高い剛性や加工精度が要求される部品には適しているものの、今回のAOにおける摺動部材については、摩擦特性、耐摩耗性、寸法安定性および加工性を総合的に考慮し、POM樹脂を採用することとした。

特に、CNC加工によって小型歯車を製作することを考慮すると、精度と加工性のバランスに優れるPOM樹脂が適していると判断した。

3. 最適なPOM樹脂の選定

POM樹脂には製造プロセス及び分子構造の違いにより「POM-H(ホモポリマー)」と「POM-C(コポリマー)」の2種類が存在する。AOの摺動部材においては、以下の理由からPOM-Cの採用を推奨・決定する。

4. POM-Cを選ぶ具体的な理由

  • 切削加工時の内部応力からなるディストーションの抑制 POM-Hは結晶化度が高く強度面で優れる反面、厚板からの切削加工を行う際に内部残留応力が解放されやすく、加工後に大きく反る傾向がある。ギアのように平行性・平面度が要求される精密部品においては、加工後の寸法変化が比較的少ないとされるPOM-Cが適していると考える。

  • 被削性とバリの少なさ 切削熱による溶着が起きにくく、エンドミルの刃離れが良い特徴を持つ。モジュール0.5〜1.0程度の小径・微細ピッチ歯車を削り出す際も、歯先や歯底にバリを残さずシャープに仕上げることが可能である。

したがって、もちろんPOM-Cの材料特性だけで加工精度が決まるわけではないが、今回の小型歯車のCNC加工に適した材料の一つであると判断した。

5. POM樹脂の短所と対策

POM樹脂は、燃焼性や耐候性など使用に注意すべき短所もある。

  • 可燃性がある

POM樹脂は、酸素指数(LOI)が約15と比較的低く、エンジニアリングプラスチック一般の性質からも言える通り燃焼しやすい材料である。

酸素指数とは、材料が燃焼を継続するために必要な酸素濃度を示す指標であり、一般的な大気中の酸素濃度は約21%である。そのため、酸素指数が大気中の酸素濃度を下回る材料は、空気中で燃焼しやすい傾向がある。

POM樹脂は主に、炭素・水素・酸素から構成され、芳香族構造を持たないことから、比較的燃焼しやすい。また、燃焼時にはその熱分解によってホルムアルデヒド(CH2O)などが発生するため、火気を扱う場所や難燃性が求められるような用途では、材料の選定や安全対策に十分な注意が必要である。

  • 紫外線への耐候性が低い

POM樹脂は、紫外線や長時間の光への曝露によって劣化しやすく、一般に、耐候性が低いと言える。

屋外で長期間使用すると、表面の変色や劣化が進行し、用途によっては機械的強度の低下や寸法安定性への影響などに繋がる可能性がある。

そのため、屋外用途では、紫外線による劣化を抑えるための安定剤を添加したグレードや、耐候性を高めたグレードを使用するなどの対策が必要。

6. PLA樹脂製シャフト・筐体との組み合わせ

歯車自体を高精度なPOM樹脂で製作しても、シャフトや軸受部がPLA樹脂で構成されている場合、システム全体の精度はPLA樹脂側の変形や摩耗の影響を受ける。

したがって、PLA樹脂は筐体などの構造部品として利用し、回転精度が必要な部分では、金属シャフトやベアリング等を使用する構成が望ましい。

よって今回は、AS及びRing-gearの一部摺動部品にベアリングを組み込ませる構成とすることで、より高精度なシステム構築を目指す。

7. 製造条件や部品としての機能を考慮した再設計

今回扱うCNC加工機は回転軸式のものであるため、深い溝や側面など、工具を垂直方向から進入させることが困難な箇所の加工には制約がある。

したがって、Planetary-SunやPlanetary-Connecterのように、小ギヤと大ギヤが一体となった部品については、部品を複数に分割することで、各部を加工可能な形状として設計する。

  • Planetary-Sun

Sun1Sun3Sun2

  • Planetary-Connecter

Connecter1Connecter3Connecter2

また、部品を分割することによって、ギヤ部品を汎用化したプレート上で切削・造形できるという利点もある。これにより、部品ごとに専用の加工形状を用意する必要がなくなり、加工工程の簡略化や部品製作の効率化が期待できる。

8. 今回の総括

今回の検討では、AOにおける摺動部材の材料について、POM樹脂、PA樹脂、PTFE樹脂およびアルミニウム合金を比較した。

その結果、今回の用途では、摩擦特性、耐摩耗性、寸法安定性および加工性のバランスに優れるPOM樹脂、中でもPOM-Cが適していると判断した。

また、POMだけでシステム全体の精度を確保するのではなく、PLA製筐体との組み合わせやシャフト・軸受部の構造についても検討し、ASおよびRing-gearの一部にはベアリングを組み込む構成とした。

さらに、回転軸式CNC加工機の加工上の制約を考慮し、Planetary-SunおよびPlanetary-Connecterについては部品を分割する設計を検討した。今後は、分割した各部品の組立精度や固定方法についても検討する必要がある。

9. 参考文献

[1]Mitsubishi Chemical Group, Advanced Materials Division, “POM plastics”. POM plastics Mitsubishi Chemical Group

[2]Sumitomo Chemical Co., Ltd., “Sliding properties of SUMIPLOY”.Sliding properties of SUMIPLOY | Sumitomo Chemical Engineering Plastics Division

10. 次回の作業予定

  • POM-C製ギヤの寸法、モジュール、歯数および歯形について再確認する。

  • シャフト、ベアリングおよびギヤの組み合わせについて検討し、摺動部の構造を決定する。

  • CAM、NC、GコードなどのCNC加工に関する専門用語および加工工程についても再確認し、設計から加工までの手順を整理する。