2026/10/06(火)2・3限
★CNC加工機の設定およびPOM-C製歯車の加工手順に関して¶
1. 今回の目的¶
前回までの検討では、Asterプロジェクトにおける摺動部材の素材としてPOM-Cを選定し、CNC加工機の加工制約を考慮した歯車部品の設計について検討した。また、Planetary-SunやPlanetary-Connecterなどの部品について、加工が困難な形状を避けるため、部品を分割する設計方針を整理した。
今回は、これらの設計方針を実際の部品製作へとつなげるため、Roland MDX-540と回転軸ユニットZCL-540を用いた4軸CNC加工の設定方法について調査した。CAMソフトにはAutodesk Fusionを使用し、機械のコマンドモードはNCコードとする。
具体的には、FusionからNCコードを出力するためのポストプロセッサ、CAMにおける機械・座標系の設定、工具経路の作成方法、および実機で加工を行う前のNCコード確認手順について整理した。
2. CNC加工におけるCAM・NCコード・ポストプロセッサの役割¶
CNC加工では、CADによって設計した3次元形状をもとに、CAMで工具経路を作成し、その経路を機械が解釈できるNCコードへ変換する必要がある。
- CAD(Computer-Aided Design)
部品の形状や寸法を設計するためのソフトウェアである。今回のAsterプロジェクトでは、Fusionで設計したPOM-C製歯車の3次元モデルが加工対象となる。
- CAM(Computer-Aided Manufacturing)
加工対象の形状や使用工具、素材、加工条件などをもとに、工具の移動経路を生成するための仕組みである。Fusionの製造ワークスペースを用いて、工具経路や加工条件を設定する。
- NCコード
CNC加工機に対して、工具やワークの移動、送り速度、回転動作などを指示するための命令である。機械によって対応する命令や解釈が異なるため、使用する機械の仕様に適合したコードを出力する必要がある。
- ポストプロセッサ
CAMで生成した工具経路を、特定の加工機が解釈できるNCコードへ変換するためのプログラムである。Fusionで工具経路を生成できたとしても、ポストプロセッサが機械の仕様に適合していなければ、意図した加工を実行できない可能性がある。
以上より、CNC加工では、CADによる形状設計、CAMによる工具経路生成、ポストプロセッサによるNCコード出力、および加工機での実行という一連の工程を適切に接続することが重要となる。
3. 使用するCNC加工機と回転軸ユニット¶
今回使用する加工機はRoland MDX-540であり、回転軸ユニットとしてZCL-540を使用する構成を想定する。
Rolandの公式資料を調査した結果、MDX-540は標準のX・Y・Z軸に加えて、回転軸ユニットを使用することでA軸による回転動作を利用できることを確認した。また、MDX-540はNCコードモードに対応しており、回転軸ユニットを使用する場合には、A軸の指令を含む加工プログラムを扱うことができる。
この構成では、ワークの回転と直線軸の移動を組み合わせることにより、通常の3軸加工とは異なる加工方法を利用できる。ただし、4軸加工が可能であることと、任意の形状を4軸加工で製作できることは同義ではない。実際の加工可否は、歯車の形状、工具の進入方向、回転軸の配置、ワークの固定方法などによって決まる。
そのため、今回の加工では、機械の軸構成を確認したうえで、歯車の形状と加工方法に適したCAM設定を行う必要がある。
4. ポストプロセッサの選定¶
FusionからMDX-540用のNCコードを出力するため、Autodeskのポストプロセッサライブラリについて調査した。
その結果、Roland ISOというポストプロセッサが公開されており、RolandのNCコードモードで使用する候補となることを確認した。
一方で、Roland ISOが公開されていることだけでは、ZCL-540を用いた4軸加工に必要なA軸指令を正しく出力できるとは判断できない。ポストプロセッサによっては、対応する軸構成や工具経路に制限があるためである。
したがって、既存のポストプロセッサをそのまま実機で使用するのではなく、まず検証用の複製を作成し、A軸を含む簡単な工具経路からNCコードを出力して、その内容を確認する方針とした。
5. FusionにおけるCAM設定¶
Fusionで加工プログラムを作成する際には、Setupにおいて加工対象のモデル、素材、座標系、原点などを設定する必要がある。また、4軸加工では、回転軸の方向および回転中心を適切に定義しなければならない。
特に重要なのは、Fusion上の座標系と実機の座標系を一致させることである。Fusionで設定したワーク座標系の原点と、MDX-540のVPanelで設定するBase Pointが一致していない場合、意図した位置からずれた加工が行われる可能性がある。
さらに、回転軸を利用する場合には、ワークの回転中心と座標系の関係を明確にする必要がある。回転中心の設定が不適切であると、A軸の回転に伴って工具とワークの相対位置が意図しない変化を示す可能性がある。
そのため、CAM設定では、機械の軸構成、ワークの取り付け方向、回転中心、原点および工具の進入方向を整理し、それらの設定が相互に矛盾していないことを確認する必要がある。
6. 工具経路の検討¶
POM-C製歯車の加工では、歯形や歯底の形状、歯幅、使用工具の径などを考慮して工具経路を決定する必要がある。
また、4軸加工では、A軸を所定の角度に固定して加工する割出し加工と、A軸を直線軸と連動させる同時4軸加工を区別する必要がある。
割出し加工は、A軸を指定角度に移動させ、その位置で直線軸による加工を行う方法である。一方、同時4軸加工では、A軸の回転とX・Y・Z軸の移動を連動させながら加工する。
今回の加工では、まず歯車の回転軸とZCL-540のA軸との位置関係を決定し、その配置で必要な加工が可能かを検討する必要がある。初期段階では、単純な形状による工具経路の検証から始め、ポストプロセッサと機械の動作を確認した後に、実際の歯車加工へ進む方針とした。
なお、工具経路の生成後には、Fusionのシミュレーションを用いて、切り残しや過切削の有無、工具とワークの干渉、チャックや芯押し台との接触、および退避動作を確認する必要がある。
7. NCコードの確認と安全な試作手順¶
NCコードを出力した後は、ファイルの内容を確認し、機械が意図した動作を行うことができるかを検証する必要がある。
主な確認項目として、A軸の回転指令、回転方向、角度、座標系、単位系、送り速度、工具の退避動作およびプログラム終了時の動作が挙げられる。
また、NCコードにA軸の指令が記述されている場合でも、それだけで4軸加工への対応が確認できたとはいえない。指令の数値や方向が実際の機械の動作と一致していることを確認する必要がある。
安全な試作に向けては、まずFusion上で工具経路をシミュレーションし、その後、NCコードをテキストエディタで確認する。続いて、機械の原点設定、ワークの固定状態、工具と治具の干渉などを確認し、切削を伴わない動作確認を行う。その後、POM-Cの試験片を用いた加工を実施し、加工状態や寸法精度を確認する方針とした。
最終的に歯車を製作した際には、歯形、歯幅、軸穴の寸法、相手歯車とのかみ合いなどを評価し、設計値との比較を行う必要がある。
8. 調査結果¶
今回の調査によって、以下の事項を確認した。
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Roland MDX-540にZCL-540を取り付けることで、A軸を利用した4軸制御が可能である。
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MDX-540はNCコードモードに対応しており、回転軸ユニット使用時にはA軸の指令を扱うことができる。
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FusionのポストライブラリにはRoland ISOが用意されており、NCコード出力の候補となる。
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Fusionでは、Setupにおける座標系、原点、機械構成および回転軸の設定が、加工結果に影響する。
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NCコードを実機で使用する前には、ポスト処理結果、座標系、A軸指令および工具経路を確認する必要がある。
9. 未確認事項¶
一方で、以下の事項については、実機またはFusion上での検証が必要である。
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Roland ISOポストがZCL-540を用いた4軸加工にそのまま対応するか。
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A軸の角度および回転方向が、Fusionの設定と実機の動作で一致するか。
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歯車の回転軸をA軸と平行に配置する構成が可能か。
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実際の歯車形状に対して、割出し加工と同時4軸加工のどちらが適切か。
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使用する工具、工具径、切削条件およびワークの固定方法が適切か。
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POM-Cの試験加工において、必要な歯形精度と寸法精度を得られるか。
これらは現時点では確定していないため、今後の検証によって具体化する必要がある。
10. 今回の総括¶
今回の検討では、POM-C製歯車の製作に向けて、Roland MDX-540とZCL-540を用いた4軸CNC加工の設定方法について調査した。
機械の軸構成、FusionにおけるCAM設定、Roland ISOポストの利用、NCコードの確認方法および安全な試作手順を整理することで、設計した部品を実際の加工へとつなげるための基本的な工程を明確化した。
ただし、ポストプロセッサの4軸対応や歯車の配置、工具経路、切削条件については未確認である。今後は、これらの条件を一つずつ検証し、実機での安全性と加工精度を確認しながら、Asterプロジェクトの歯車製作を進める。
11. 次回の作業予定¶
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歯車の回転軸とZCL-540のA軸との位置関係を決定する。
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Roland ISOポストのA軸対応を確認する。
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Fusionでテスト用のSetupと工具経路を作成する。
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NCコードを出力し、A軸指令、座標系および退避動作を確認する。
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POM-Cの試験片を用いて加工を行い、加工状態と寸法精度を評価する。